信頼できるめがね店を見つけるのは難しいですよね。例えば、価格がお手ごろでカッコ良いめがねが欲しいなぁー、長い時間かけいても疲れない掛け心地が良いめがねが欲しいなぁー、眼鏡処方箋だけどめがねやはどこでも良いのかなぁーとか、いろいろ悩みますよね。
実はこの話、以前のブログに書きました。しかしながら、接客サービスがかなり進んだ後になるので気弱な人の場合は購入を断りづらい雰囲気になってしまいます。
今回のブログ記事は、前回と異なりめがね店に相談する前段階で、技術サービスレベルを評価する方法(目踏み:造語)についてお話します。
信頼できるめがね店を数分で見分ける3つのポイント
めがねの価格に対する考え方は、お客とめがね店では異なります。お客はめがね一式(フレーム、レンズ、付属品)の品質の違いによって価格が決定されると思っている人が多いようです。
確かに、時計や家電製品や既製服のように既に完成品に近いものを販売する場合は、この考え方で正しいと思います。しかしながら、視力矯正用のめがねは全て特注のオーダーメイドになります。
従って、めがね店の場合はめがね一式(フレーム、レンズ、付属品)の品質の違いに技術サービス料(視覚検査、フィッティング、眼鏡設計、加工)を上乗せした料金をめがねの価格としています。
下図を見て下さい。これは、技術サービスのレベルが同等であるめがね店を例示したものです。上段は低価格店、中段は中価格店、下段は高価格店をそれぞれ示しています。
低価格店
中価格店
高価格店
正しいめがねの価格
ただ、現実には低価格店と中高価格店とはビジネス形態が全く異なります。低価格店がめがねを低価格で販売して中高価格店と同じ利益を確保していくためには二つの対策が必要になります。
一つ目は、めがねの品質レベルを落とす必要があります。現在のフレームの主流は、金属製の場合はチタン素材になります。最大の利点は軽量かつ強度が優れており金属アレルギーが生じにくい素材になります。プラスチック製の場合はアセテート素材です。最大の利点は難燃性でフィッティング時に頭の微妙な形状に合わせやすいことです。
低価格店が利益を出すためには、上記のフレーム素材より安いニッケル系のメタルフレームやナイロン系のセルフレームにすることで価格を抑えることが可能になります。また、レンズについては新製品以外の製品や大量仕入れによる低コスト化を実現しています。
二つ目は、1日あたりの集客数を中価格店の倍以上に高くすることです。最も効果的な方法は、一人ひとりに費やす接客サービスの時間を短縮する必要があります。
めがね店の接客サービスには、お客が商品選びをサポートするサービスとめがねを作製するための技術サポートの二つがあります。前者は商品の特性を理解しやすくし、後者は品質の高いめがねを提供するために重要です。
このように、低価格店の場合は中高価格店に対してかなり一般雑貨寄りの販売方法になりますが、今の経済状況を考えればお客にとっては有難いことかも知れません。
ただ、大きな問題は二つ目の接客サービスのレベルがどうなっているかです。これは低価格店だけでなく、中高価格店でも同様のことが言えます。特に、技術サービスの手抜きやレベルをお客が自ら判定することは難しいと思います。
しかしながら、めがね店内の雰囲気や社員の行動などから品格(企業体質)をある程度判断することができます。その方法として以下の3つを紹介します。
- 眼鏡作製技能士が在籍していない
- 陳列棚のフレームが基本点検されていない
- 店員のめがねのかけ方にイマイチ感
眼鏡作製技能士が在籍していない
めがね店に入って眼鏡作製技能士の在籍が確認できない場合、そこのめがね店では最高の技術サービスを受けることができません。
めがね店の業務は一般雑貨販売ビジネスと異なり、医療連携が必要な半医半商ビジネスといわれており、それを証明する形で2022年に国家検定資格「眼鏡作製技能士」が誕生しました。
眼鏡作製技能士の役割は、欧米や日本以外のアジア諸国と大きく異なります。例えば、日本以外の場合はめがねやコンタクトレンズを作製するときにある程度の医療行為が認められていますが、日本の場合は医師法違反となります。
しかしながら、近年は高齢化による視機能の変化や携帯電話などのモバイル機器の発展により眼科との医療連携を強化しないと日本以外の諸国と同じように快適で掛け心地の良いめがねを提供できない状況にあります。
従って、日本においても理想的なビジョンケアを実現するためには、それぞれの地域において眼科とめがね店が連携してユーザーの目の健康を守って行く必要があります。その中心的な役割を果たすのが、めがね店側は眼鏡作製技能士であり眼科側は眼科専門医と視能訓練士になります。
日本版ビジョンケア
日本以外のビジョンケア
ビジョンケア違い
日本版ビジョンケアでの眼鏡作製技能士の役割は何なの!?😒
厚生労働省は、以下の目的を実現していくために「眼鏡作製技能士」を誕生させたんだよね
「適切な診断・治療」と「適切な眼鏡作製」の双方の実現に向けて、眼鏡技術者が眼科専門医と連携しつつ国民により良い眼鏡を提供し、国の健康を守れるよう眼鏡作製の技能を高めていくこと。
現在は、この目的を達成するために眼科側とめがね業界の間で具体的な話し合いが進められている段階なんだ。
だから、眼鏡作製技能士が在籍していないめがね店では、今後この医療連携という技術サービスが受けられないということだよね。
日本版ビジョンケアで眼鏡作成技能士の役割
それは大変だね。これから眼鏡作製技能士の役割はますます重要になっていくことだよね。じゃー、どうやってめがね店を見極めればいいの!?😒
2024年11月現在、眼鏡作製技能士は全国に8,748名います。具体的な方法としては、めがね店に入ると眼鏡作製技能士合格証(コピー)が掲示されているところが多いようです。
また、インターネットでは日本メガネ協会のHPに眼鏡作製技能士の在籍店を探すためのサイトがありますので、そこでお近くのめがね店を確認することができます。
眼鏡作製技能士の合格証
眼鏡作製技能士の在籍店:日本メガ協会HP
眼鏡作製技能士在籍店の探し方
陳列棚のフレームが基本点検されていない
めがね店のフレーム陳列棚はお客が店内に入って自由に掛けてもらうためにあります。従って、一つひとつのフレームが基本点検されていないめがね店は技術サービスの重要性に対する意識のレベルが低いと思われます。
一般に、お客はカッコいいめがねを探すために陳列されているフレームを掛け比べて自分に似合うかどうかを確認します。その時に、フレームが商品として整えられていないと正しい判断ができません。
フレームの基本点検は、個々のお客に掛け心地を確認してもらうためではなくフレームが似合うかどうかを自由に掛け比べしてもらうことが目的です。そのためには、絶対に外せないいくつかのポイントがあります。
下の図は、お客にチェックして欲しいフレームの基本点検の位置を示したもので、フレームの中心軸に対して左右対称に整えるのが基本になっています。以下に、それぞれの部分について正しい状態を説明します。
- 鼻パッド:左右が均等に八の字開きになっている、左右の間隔が適度の広さに確保されていること(下図参照)
- パッドアーム:左右の長さが均等で、のび過ぎたり潰れたりしていないこと(下図参照)
- 智(ち):フロント面とテンプルで成す角度が85度程度であること
- テンプル:左右の開きが均等、垂直方向で並行であること
- リム:左右の形状が対称であること
- フロント:左右の面が前後にねじれていないこと
フレームの構造と名称(一部抜粋)
この中で一番大事なのはどれ!?😒
一つではない。大事なことはフレームを試着したときにハンズフリーで正しい位置に収まるかどうかということだから、そこをポイントとすると、鼻パッドとパッドアームの鼻への当たり具合、テンプルの開き具合だよね。
残りの二つ(リム、フロント)については、技術サービスを重視しているめがね店では余程の粗悪品でない限りありえない。仮に、そういうものが複数本あるようであればそのめがね店はやめた方が良いと思うよ。
じゃー、その4つについて少し詳しく教えて!?😒
先ず、フレームをチェックするときの正しい位置は、下の左図になるんだけど、鼻パッド、パッドアーム、テンプルの3つが基本点検されていないと中央と右図のように顔に対する収まりが悪くなるんだ。
もう少し細かく説明すると、鼻パッドとパッドアームが広すぎると中央の鼻めがね状態になるし、逆に狭すぎると鼻の上にフレームが乗っかってしまい鼻が低く見えるんだよ。少しでも鼻は高く見えた方がカッコ良いよね。
正しい位置
鼻めがね
左上がり
めがねの掛け方
それから、テンプルの開きが広すぎるとフレームを支える位置(力学でいう支点)がなくなるから鼻めがね状態やひどいときは落ちてしまう。逆に狭すぎるとフレームは前面に飛び出すので、その重さで鼻パッドの間隔とぴったりと合うところまで下がってしまい、いわゆる鼻めがね状態になります。
君もやってごらん。②までは確認できると思うよ。
両指でこめかみ付近のテンプルを押す
フレームのフロント面が下がる状態
テンプルの開きが狭いときに起きる鼻めがね
ねぇねぇ、上の図に智というのがあるけど、これはどういうものなの!?😒
これにはいろいろな役割があるんだけど、基本点検に絞って説明すると二つあると思う。
一つ目は、智はフロント面のリムとテンプルをつなぐ役割をしているよね。だから、平均的な顔(頭)の構造に対してフレームが正しい位置に収まるようにするための調整機能としての役割があるんだよ。
君も知っていると思うけど、人間の顔や頭の形状は左右対称じゃないよね。だから、この部分の調整幅が狭いフレームは扱いづらいから、誰にでも合うわけではなく対象者が限定されるんだよ。
二つ目は、フレームのサイズを決めるときの目安になっているんだよ。実際のフレームを見てみると、智の部分はフロント面から5ミリ程度でっぱっているよね。これがヒントなんだけど、厳密にいうと顔と頭の幅は少し違うんだよね。顔は左右のこめかみ間の幅、頭は左右の上耳の付け根あたり間の幅で大よそ1〜1.5㎝程の差がある。
だから、左右の智間の幅を平行にしておくことでほとんどの人が陳列棚のフレームを自由に試着して掛け比べすることができるんだよね。
そうか、最適サイズをお客が勝手に選んでくれるのだからお店の店員も楽だよね!?😁
そうだね。あくまでも似合うかどうかの判断だけどね。
店員のめがねのかけ方にイマイチ感
めがね店に在籍している店員の掛け方は、そのお店の技術を映し出す鏡です。店員が掛けているめがねの掛け方がイマイチと感じるならば、そのお店の技術レベルが低いと思われます。深入りするのはやめた方が良いと思います。
めがね店の店員が自身の能力以上の技術をお客に提供することはできません。では、その技術レベルを見分ける方法は主に3つあります。
- 鼻パッドが正しい傾斜位置に均等にない接着していない
- テンプルがこめかみに食い込んでいる
- モダン部の曲げ位置が適正な位置で調整されていない
鼻パッドが正しい傾斜位置に均等にない接着していない
下図のように、鼻の正しい傾斜位置に均等に接着していない場合は、テンプルの調整不良です。これはフィッティングの基本の基の一つです。店員の鼻の傾斜部を見て正しく接着していなければ、めがね店の技術サービスに対する技術レベルや意識は低いと思います。
理想的な鼻パッドの調整状態
テンプルがこめかみに食い込んでいる
鼻めがねになる条件は幾つかありますが、テンプルの開きを狭めてこめかみを締め付けると鼻めがねになります。これもフィッティングの基本の基の一つです。
下図のように店員のテンプル部を見てこのような状態であれば、めがね店の技術サービスに対する技術レベルは相当低いと言わざる得ません。
テンプルの開きが狭い状態
モダン部の曲げ位置が適正な位置で調整されていない
モダンの長さは耳の上部付け根位置で曲げるのが最適ですが、その曲げ位置が短かったり長かったり未調整だったりすると鼻めがねの状態になります。これもフィッティングの基本の基の一つです。
下図のように店員のモダンの曲げ位置を見てこのような状態であれば、めがね店の技術サービスに対する技術レベルは相当低いと思われます。
適正な調整
短すぎる調整
長すぎる調整
未調整
モダンの調整具合
どうして鼻めがねはダメなの!?😒
そうだね。最初から鼻めがねを目指してフィッティングしているのなら良いのだけど、何かの問題の結果として鼻めがねになっているとしたら、それは間違いなく技術不足だよね。
ちなみに、最初から鼻めがねとしてフィッティングしている人は、接客中に頻繁に自分のめがねに触ることはないよ。何故だか解かる?
どうして!?😢
それはね、めがねに触るたびに手の皮脂汚れが付くからなんだよ。だから、頻繁にめがねに触る行為は、明らかにフィッティングが不十分だということなんだよ。
そうなんだ。じゃー、全体を通してもう一つ疑問があるんだけどいいかなぁー!?😁
どういうこと?
これらを全てクリアしているめがね店は信頼できると思って良いの!?😒
あぁぁ、そういうこと。まぁー100%とは言えないけどかなりの確率で技術サービスのレベルは高いと思うよ。でもね、したたかなめがね店だと「やってる感」をうまく演じることもあるからねぇー。
そういう場合は、どうするの!?😢
そうだね。今回の内容は、数分で信頼のおけるめがね店を見分けることがテーマだから、これで見分けることができなかったら、取り合えず信頼に足ると判断し駒を一歩先へ進めることになるよね。
先へ進めてどうするの!?😢
先へ進めるということは、お気に入りのフレームをいくつか選んだり、フィッティングしてもらったり、視覚検査をしてもらう段階に入るから、さすがにここまでくると買わなきゃ悪いという気になる。
しかし、お金を払うのはお客の方だから、強い意志で断る勇気を持つ必要がある思う。
そして、この先は以前のブログ「【必見】良いめがね店を短時間で見分ける5つのポイント」を参考にして進めて行けば良いと思うよ。
そうだよね、めがねの価格はめがね一式価格と技術サービス料なんだから、技術サービス力がなかったり、手抜きだったら高い買い物になってしまうもんね!?😊
低価格店
中価格店
高価格店
不当なめがねの価格
信頼できるめがね店を数分で見分ける3つのポイント|まとめ
- 眼鏡作製技能士が在籍していない
- 陳列棚のフレームが左右均等に調整されていない
- 店員のめがねのかけ方にイマイチ感
今回の記事では、信頼できるめがね店を簡単に見分ける3つのポイントについて紹介しました。
現在、めがねビジネスは一般雑貨販売のような販売形態に見えます。しかしながら、実際のめがねの価格は、めがね一式の価格に技術サービス料が加算されて決められます。技術サービス料の内訳は、主に視覚検査、フィッティング、眼鏡設計、加工仕上げになります。
厚生労働省はめがね販売における技術サービスの重要性を認め、2022年に眼鏡作製技能士を誕生させました。これを起点として日本のビジョンケアは大きく変わっていくと思われます。
どのように変化していくのかというと、それは半医半商ビジネスが強化されていくということだと思います。勿論、半医とは眼科との医療連携であり、半商とはカッコ良くかつ掛け心地の良い快適なめがね作りです。
この中にある医療連携や快適な掛け心地の良いめがね作りは、すべて技術サービスによって決まるものです。しかしながら、お客が技術サービスのレベルが高いめがね店を探すのは至難の業だと思います。
今回は、それを少しでもサポートできればということで書いてみました。読者の皆様もこの変化を理解し自分に合った良いめがね店を探して欲しいと思います。
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